街中の、元旅館を学生が再生

文=黒田良太


街中で見つかった、元旅館の建物。

4月、山形R不動産として最初のプロジェクトの「元旅館を学生が再生」が一段落つきました。

初めは、街中に学生が生活する場所をつくろうと思い、山形R不動産のウェブサイト立ち上げと同時進行で進められていました。進めていく過程で、いろいろあり、この古い空き旅館を再生して、アーティスト・イン・レジデンスや長期滞在型の宿、そして学生たちが運営するギャラリーをつくるプロジェクトになりました。


地方都市のコンパクトさ

このプロジェクトは学生が主体となって、進められてきました。
旅館のオーナーさんを見つけ出し、強引にプレゼンテーションし、さらに予算が足りなかったので地元の銀行にも融資のプレゼンを行いました。
初めは慎重だったオーナーさんも、だんだんノリ気になり、提案は瞬く間に承認され、3月に着工していました。


壁を壊します。


畳からフローリングにします。


自分たちでつくった、みんなの空間

4月からまたにぎやかになったこの古い旅館は、学生たちが設計し、そして壁のペンキを塗ったりしてチュ−ンナップをしました。自分たちが使う空間を、自分たちでつくって、それを街に定着させようとしています。
現在11人が生活しており、アーティストを志す人やデザイナー、学生など様々なジャンルの人間が暮らし、キッチン、ダイニング、トイレ、シャワー室、洗濯室の空間を共有し、一人暮らしでは体験できない時間を過ごしています。


(左)キッチンBefore/(右)キッチンAfter


(左)個人部屋Before/(右)個人部屋After


ミサワクラスの1〜4階の図面。※クリックすると拡大表示します。


次の段階への準備

自分たちが使う空間を、自分たちでつくる作業は、現在も続いており、空間は日々変化しています。
4月からの4ヶ月間、僕も含めたここで生活している人たちは、この建物を、これからどう使っていくのかを考えたり、ちょっと改造してみたり、これから先の話し合いと実験をしていました。


キッチンでミーティング。名付けて「スタジオ・キッチン」


(左)4階のプロジェクトルーム/(右)4階の部屋のペンキを塗る


三沢旅館から、ミサワクラスへ。建築+アートの実験フィールドへ。

4ヶ月間のアイドリング期間を経て、「三沢旅館」は次の段階へと歩を進めます。
名称を「ミサワクラス」と変え、建築とアートの実験フィールドとして、ミサワクラスで生活する人を中心に活動をしていきます。

ミサワクラスとは、総称であり建物の名称、建造物として、ここに暮らす個性豊かな人たち、プロジェクト、オープンスペース、アートワーク、イベントなど、ミサワクラス(旧三沢旅館)に暮らすから発信していく事象を指します。

ミサワクラスでは、様々な機関と連携した活動を試みています。

現在進行しているプロジェクトは東北芸術工科大学美術館センターが企画している、「I'm here. 2009」(Artist in Residence)【注】のプログラムで、4名のアーティストがミサワクラスに入居し、実際に暮らしながら作品を制作していきます。

8月にはミサワクラスのウェブサイトがオープンし、ミサワクラスでの様々な出来事を、ブログで随時公開していきます。


※クリックするとミサワクラスのサイトに飛びます。

【注】 I'm here.

東北芸術工科大学では、2005年から各地のギャラリーや美術館と連携して、アートショー「I'm here.」を開催し、将来活躍の期待される卒業生の作品を継続して紹介し、若手アーティストの活動を、地域社会が積極的にサポートしていく関係を図式化しています。2009年度版 I'm here.では、「ヤマガタR不動産」と連携して「ミサワクラス」を共同設立。4人のアーティストを送り込みました。空間の提供者でもある地域の方々と連携し、山形だからこそ可能なサイトスペシフィックなプロジェクトとして、彼らのアート活動を全国に発信していきます。
東北芸術工科大学美術館大学センターHP http://www.tuad.ac.jp/museum/


ここからはじまる、山形R不動産リミテッド

まだまだ始まったばかりのミサワクラスですが、現在進行中のプロジェクトのきっかけを作ってくれたのは、この建物です。
山形R不動産リミテッドのはじめてのプロジェクトであり、山形ではまだ馴染まないリノベーションのわかりやすい事例になったようです。
いままで紆余曲折ありましたが、ここからいろいろな物語が生まれていけば、幸いです。


2008年3月 ミサワクラスの部屋にて