第5話 (I Can't Get No)Satisfaction

(このコラムはしばらくの間、過去振り返り形式でお届けします)

8月
先月のSS落下事故(第4話)のショックをひきずったまま、8月に突入しました。
周囲の人たちは、「兼業なんて無理。どっちも中途半端になるから、思い切って農家止めろ」なんて言う人、「オヤジがあれだけ立派に育てた果樹園がもったいない。思い切って会社辞めて専業農家やれ」っていう人など、いろんな意見が。そりゃそうだろうけど。どっちも、相当思い切らなきゃできないよな。でも、「兼業」=「中途半端」 なんていう見方をされたくはないし。
「兼業」だから、どうしても仕事が中途半端になりがちだし。しかも初めての作業なんかは要領もわからず能率も悪いし。会社へ行っても半端になってる作業が気になって本業(?)のヤル気がでないし。これまで専業でやってきたウチの畑は兼業ではとてもこなせるはずはない。やり始めた頃はヤル気も十分、能天気に「楽しみながらやろう」なんてトボケたこと考えてたけど。。。
愚痴と葛藤と不甲斐無さとが入り混じり、自分のやっていることに満足できない。納得できない。
本業にも農業にも、自分の「仕事」へのクオリティが上げられないことへの不満か?
いいのか悪いのか、「欲」が出てきたのか?
それでもとにかく兼業農家を続けているのでした。

7月の下旬から「リンゴ」の仕上げ摘果と徒長枝整理を始め、8月に入りやっとメドがたってきました。同じリンゴを作るのにも、それぞれ農家ごとに作業のやり方が多少違いますが、ウチでは「サクランボ」も作っているので6月はリンゴに手がかけられないため、5月の開花の後に まず①「花摘み」を、5月中旬ごろに ②「摘果」を、7月中旬ごろに ③ 「仕上げ摘果」を行っています。

〔農業ひとくちメモ〕
①花摘み・・・リンゴの花は1ヶ所に5つぐらいの花が咲く。このうち一番大きな中心の花(中心花)をひとつ残して、周りの花(側花)を摘み取る。全部の花が実になると1つ1つの実が大きくならず、おいしいリンゴにならない。また、早く花を摘むほど樹の貯蔵養分の消耗が少なく、結実や幼果の発育、枝の伸長、来年のための花芽形成にプラスとなる。

②摘果・・・第3話も参照。花摘み後、1株に5~6個の幼果の中から一番大きなものを選び、他は全部摘み取る。リンゴは一般に1果育てるために葉数が50枚くらい必要といわれ、摘果をしなければ果実に養分が行き届かず、大きく育たないため小玉で商品価値がなく、樹体に負担がかかり翌年には実がつかなくなるなどの悪影響があるため、重要な作業。

005_01.jpg摘果後のリンゴ(ふじ)の木。ひとつひとつ手作業で丁寧に、こんなにたくさん落とすんです。

そして、日常の園地管理でかかせないのが、田んぼの見回り。
水戸農園では果樹の生産が主ですが、農家なのでもちろん田んぼもあります。減反政策などで田んぼをサクランボ園に変更したため、現在は自宅の飯米と家族や親戚数家族が1年間食べるだけの量の米(はえぬき)を作っています。

005_02.jpg第1田んぼ (約40a ) 山形オリジナルブランド米「はえぬき」 食味ランキング14年連続「特A」受賞銘柄

7月下旬(土用あたり)、水田の水を全部抜いて中干し(土用干しともいう)をしているので、この時期は田んぼに水はありません。

〔農業ひとくちメモ〕
水田の中干し(土用干し)・・・7月下旬、稲の分株(1株の茎数が分かれて増える)が進んだ頃、水田の水を全部抜いて泥にひび割れができるまで干す。これにより、出穂・開花が斉一になる。

毎年4月に種まき、苗を自宅で育てて、5月に家族で田植えしている田んぼ。とっても順調に育って、一番穂が出ました! 今年もいい米ができそうです。

005_03.jpg8月2日撮影。この日、出穂(しゅっすい)を確認! いい感じに育ってます。

しか~し、1枚目の田んぼの写真を見てお気づきの方もおられるでしょう。他の果樹園のみならず、田んぼの畦(山形では「くろ」って読むのが一般的)にも雑草が。。。
またまた、問答無用で除草です。
田のくろは狭く平らではないので、スーパー営農マシーン2号「草刈機マサオ(第3話に登場)」 では無理。こんな時はマサオに代わる営農マシーン「刈払機」(通称 肩掛け1号)の登場です!

005_04.jpg平らではない土手や狭い木の根元など、使い勝手抜群! 愛用の「肩掛け君1号」

でも、田んぼのくろは当然ですが水路と接していて、そういう川沿いの雑草の中には、私の天敵「ヘビ」がよく潜んでいます。田んぼや畑のヘビはネズミや害虫を食べてくれる役に立つ生き物らしいのですが、恥ずかしながら、手とか足がなくニョロニョロ動き、ペロペロするアイツが幼少の頃から大の苦手。一度、仮払い機で除草中、2mくらいある大物のシマヘビを引っかけて、そのショックですぐさま除草作業を中止したという苦い経験があるのです。あ~あ、やだな~。といいつつも、こう見えても本物の兼業農家です。モノホンだよモノホン。いわば、プロ(?)の端くれだよ。そんな温いこといってらんねぇ! やってやるぜ!

というわけで、ちょうど休日だったこともあり、初登場! 水戸農園 副社長(弟ですけど。)が助っ人に来てくれました。一人でやりたくないから無理やり呼んだともいえますが。
昔から、一人よりも二人、二人よりも三人とはよく言ったものです。(言ったか?)
おかげで、この日はヘビに出会うこともなく、田のくろの除草もスムーズにはかどりました。

005_05.jpgさすが! 頼りになるぞ 「副社長!」 田んぼの除草、また手伝ってね。(ちなみに、弟が使ってるのは 肩掛け君2号)

8月は農家にとって一番忙しく、暑さの中の作業は過酷で辛い季節です。この時期は「○○の収穫」といった大きな作業がある訳ではなく、リンゴの摘果、徒長枝整理、除草、田んぼの水管理、果樹の支柱設置・・・・というような日常の管理作業が山積。あれも、これも、それも、次々と仕事を掛け持ちしながら過ぎていく毎日。そして、そのあい間に会社へ出勤。「兼業農家」って、どっちがメイン?(・・・数えてみたら7月は、農作業17日 VS会社へ出勤14日 で、完全に農業がメイン)

・・・いいのか?・・・・まあ・・・・いいか。。

つづく

このブログについて

山形R不動産仲介担当の水戸靖宏が、ある日突然兼業農家になり、戸惑い、苦悩し、時折愚痴を言いながらも、楽しく農地と向き合っていくストーリー。後継者不足で増え続ける空き農地。山形R不動産では物件ばかりではなく、農地や農業も紹介してしまうのか!?

著者紹介

水戸靖宏(千歳不動産株式会社常務取締役)
山形R不動産における不動産仲介業務担当