第14話 Superstar

(このコラムはしばらくの間、過去振り返り形式でお届けします)

11月上旬
すっかり日も短くなり、お日様が昇るのは6:30ごろになりました。

014_01.jpg 晩秋の日の出。今日もいい天気です!

前回の「ラ・フランスの収穫」のネタで、「スーパーラフランス」って?と濁していましたので、農業ファンのみなさんは首を長くしてお待ちかねのことと思います。

ラ・フランスの生産量日本一を誇る、JAてんどうでは通常の商品との差別化を図るために、厳しい基準をクリアしたラ・フランスの最高級品のみ「スーパーラフ」というオリジナルブランド名で販売しています。(スーパーラフ認定基準:階級18玉(290g/2L)以上、糖度14度以上)

014_03.jpg これがスーパーラフ!その化粧箱にも高級感が漂います。まさにラフランスのスーパースター!

JAてんどうでは「認定園地」制度を設けており、「スーパーラフ」を生産するためには、土づくりからきめ細やかな栽培管理が求められ、樹木の状態、肥料散布や防除管理の状況など、毎年園地審査が行われ、基準をクリアした「選ばれた園地」である「スーパーラフ登録園地」に限って生産が許されます。

014_02.jpg じゃじゃ~ん!ウチのラフランス園。「スーパーラフ登録園地」の文字が!自慢ですけど

そして登録園地の生産者ごとに選果して出荷されるのですが、「スーパーラフ」規格で出荷された品物全てが「スーパーラフ」になる訳ではなく、さらにJAによる厳しい品質チェックを受けます。JAてんどうラフランスセンター自慢の光センサーによる糖度検査などを受け、基準をクリアしたものだけ「スーパーラフ」の称号を得て市場に出されるのです。

「スーパーラフ」は生産する園地が審査をクリアして認定され、なおかつ、一つ一つの果実そのものが条件を満たした、糖度、大きさ、形状、全てが優れた最高級品で、県内のラフランス総出荷量のわずか数パーセントしか生産されないという超プレミア商品なのです。

今年ウチで出荷したラフランスが約11トン。その60%(約7トン)がスーパーラフ規格での出荷、最終検査後「スーパーラフ」として販売されたのがそのうち15%(約1トン)でした。
割合からすると、これでもかなり優秀な方です!さすが自称「くだもの職人」の父の園地。
これからは、自分がスーパーラフ登録園地を守り、さらに最高級規格での販売数を増やしていきたい!・・・のはやまやまですが、どうなることやら。。トホホです。


トホホはさておき、今日は「JAてんどうラ・フランスセンター」で共選作業です。

014_04.jpg JAてんどうラ・フランスセンター。ラ・フランスのためだけの施設。スゴイです!

天童はラ・フランスの生産量日本一。
当然、「JAてんどう」はラ・フランスの生産・販売に力を入れており、ラ・フランスを集めて商品にして市場へ出荷するという一連の工程を一括管理するために「JAてんどうラ・フランスセンター」という施設をもっています。

外見はただの倉庫みたいですが、中は予冷のための超大型冷蔵庫や最新鋭の出荷システムが設置され、ローラーコンベアでのコンテナの流れに従い、光センサーによる品質検査、選果、箱詰めが一環してでき、最後の出荷エリアには商品として完成したラ・フランスが続々と流れてくるという、まさにラ・フランス工場とでもいえるスゴイ施設です。

ラ・フランスは収穫後JAへ集荷されたもの全てをラ・フランスセンターで一定期間冷蔵庫に入れて予冷処理され、さらに一定期間追熟してから市場へ販売されます。

JAてんどうの今年のラ・フランス出荷見込みは2400トン程だそうですが、それ以上の量のラ・フランスが一斉にこのラ・フランスセンターに持ち込まれ、それを短期間に商品化するという作業を行うわけですから、一時的には相当な人数の人手が必要になります。

そこで、最盛期となるこの時期、組合員であるラ・フランスの生産者が毎日交代で、共選作業員としてラ・フランスセンターの選果やら箱詰めやらの作業をお手伝いするのです。
もちろん私も、一応(?)生産者ですから朝8時から夕方5時までお勤めしてきました。
その日も、市内各地からラ・フランスの生産農家のみなさんが約50名ほど来ていました。

配属されたのは、ラ・フランスの選果・箱詰めのライン。

014_06.jpg 奥の方まで約20人位ならんで一気に箱詰め。同時に4~5ラインが稼動。

ここで毎日働いているベテランのパートのおばちゃんに混じって、流れてきたコンテナから果実を取り出し、丁寧に傷や痛みがないかをチェックして化粧箱に入れていきます。

014_05.jpg こんな感じで箱詰めされます。

JAの品質基準はとても厳しくて、針の穴くらいの傷も見逃しません。
傷ともいえないくらいの、木の枝の擦れ痕だけでも規格外として撥ねられてしまいます。
「JAてんどうのラ・フランス」というブランドを守るために。

販売される果実には、品質保証のため一個一個にロット番号の入ったシールが貼られていて、販売後に万一痛みなどで消費者の方から苦情があった場合、どの生産者が作ったものか、いつ箱詰めされたかも全てわかるようになっています。

014_07.jpgこの奥の機械で蓋が閉じられ 完成!これからトラックに載せて市場に運ばれます。

生産者のみなさんが、長期間かけ丹念に手入れし苦労してようやく収穫した果実。
いま自分がチェックして規格外として撥ねた物が、自分の畑の物だったら、と思ったり。
ほんのちょっとの擦れがあっても全く味は変わらないのに、と考えてしまったり。

生産者目線からはちょっと複雑な部分も。

・・・でも、自分だって、できるだけ黒くなってないバナナを選んで買っちゃうしな。

ただ、自分達が作り出荷した果物が、どんな風に取り扱われ、どんな形で市場に出て行くのか、その過程を経験し知っておくことも生産者にとって大切だな、と感じた一日でした。


つづく

このブログについて

山形R不動産仲介担当の水戸靖宏が、ある日突然兼業農家になり、戸惑い、苦悩し、時折愚痴を言いながらも、楽しく農地と向き合っていくストーリー。後継者不足で増え続ける空き農地。山形R不動産では物件ばかりではなく、農地や農業も紹介してしまうのか!?

著者紹介

水戸靖宏(千歳不動産株式会社常務取締役)
山形R不動産における不動産仲介業務担当