第20話 Crossroads

(このコラムはしばらくの間、過去振り返り形式でお届けします)

2012年 3月
雪の中での剪定作業、まだ続いていました。

果樹園への道路は「農道」のため、除雪されません。
普通車では絶対に走れないくらいの積雪量ですが、私以外にも誰かごくたまに通っている人がいるようで、農道にはワダチができており、慎重にワダチを逸れないように走れば、4WDのトラックならなんとか園地まで行くことができます。

そして、ほとんど誰も通らない農道ですが、路上駐車して作業する訳にもいかないので、園地の道路面に手作業で車一台分の駐車スペースを作って駐車します。

剪定作業の前に、駐車スペース確保のために約1時間ほどの除雪作業。
70cm~1m近くの積雪は、除雪というより雪掘りという感じ。

ですが、翌週に行くと、苦労して掘った駐車場には、雪がまた降り積もり、せっかく作った駐車スペースはすっかり埋もれているのでした。

020_08.jpg 手作業で除雪し車一台分の駐車スペース確保。積雪70cm位、重労働です。

雪は3月上旬まで降り続き、お彼岸が近くなってようやく晴れる日が多くなってきました。
天気がよくなってきて、果樹の雪下ろしや駐車場の除雪など、余計な仕事も不要になり剪定作業が少しは捗ってきました。

020_01.jpg ラフランス園。剪定作業には欠かせない「脚立」と「長柄鋸」と「高枝バサミ」。

遅ればせながら、12月から毎週一緒に剪定作業をしてきたパートナーたちの紹介です。

「脚立」・・・脚立がなくては剪定できません。大雪の中では脚立の脚が積雪に刺さって移動が一苦労。そして脚立を安易に立てると、上がったときに脚がさらに雪にめり込んで脚立がガクンと傾き転落の危険があるため、脚立を置いたら一番下段を足で強く踏んできっちり雪にめり込ませてから上るようにします。

「長柄鋸」・・・1.5mの長柄がついてます。自分の身長+手を伸ばす+長柄で3m位の高さの枝なら脚立なしでも楽に切ることができます。

「高枝バサミ」・・・アーム部分が1.8m位あり、これも高い枝を脚立なしで切れます。

020_04.jpg 剪定アイテムたち。「剪定鋸」と「剪定鋏」。

「剪定鋸(手引き鋸)」・・・枝の込み合った狭い隙間や、脚立の上など、長柄鋸では使いにくい場所で太めの枝を切るのに使います。

「剪定鋏」・・・鍛造のプロ用剪定鋏。「○○作」という名が刻印されている職人が作った逸品。毎年研ぎに出して長年使っています。

「保温水筒」・・・熱いコーヒーを入れて必ず持って行きます。極寒の中、畑での一服は至福のひと時。コーヒーはインスタントでも、これがまた美味いんです。


技術も経験も時間もなく、どうしようか迷ったあげく、自力で剪定を始めて3ヶ月。
こんな切り方でいいのか、果実がどう育つのか、全く自信がなく出口のない迷路を彷徨っている感覚ですが、なにはともあれラフランス園、リンゴ園の剪定を終えました。

020_03.jpg 剪定が一番難しいリンゴ。本数が少なくなったため、なんとか終えることができました。

最後の追い込みで、サクランボ園の剪定を急いでいます。

020_02.jpg 最後にサクランボ。ラストスパートですが、まだ先が長そう。。

昔から「桜切るバカ、梅切らぬバカ」といって、桜は枝を切り過ぎるとそこから病原菌などが進入し枯れてしまったり、養分の流れが狂い弱ってしまったりするが、梅はある程度切らないと良い実ができない、という意味らしく、バラ科サクラ属のサクランボは桜同様あまり切らなくてもいい、とも聞きます。

でも、商品として果実を生産するからには、一つ一つの果実が大きく育つために、その果実をつける枝を大事に育てるために、邪魔になる枝は、やはり切らなくてはなりません。

剪定一年生の私には難しすぎる技術です。
「失敗は仕方ない」と覚悟はしているものの、「あまり切り過ぎては枯れてしまう」なんて聞くと、どうしても悩んでしまうことも。

家に帰り、そういう自分自身の不甲斐無さから、妻や母に、

「素人の剪定で、デタラメ切ってるから、今年はどんな果実になるんだろう?」

って愚痴ってみたら、母が、

「リンゴさはリンゴ、ナシさはナシ、サクランボさはサクランボ生るっだな。心配いらね。」

と、あっさり。

たしかに、リンゴの木にサクランボは生らないよな。ここにきて悩んでもはじまらない。
腹が据わってる母の一言に、なんだか救われました。


もう、3月も終わりです。
サクランボの剪定、あと2週位かかるかな。。


つづく

このブログについて

山形R不動産仲介担当の水戸靖宏が、ある日突然兼業農家になり、戸惑い、苦悩し、時折愚痴を言いながらも、楽しく農地と向き合っていくストーリー。後継者不足で増え続ける空き農地。山形R不動産では物件ばかりではなく、農地や農業も紹介してしまうのか!?

著者紹介

水戸靖宏(千歳不動産株式会社常務取締役)
山形R不動産における不動産仲介業務担当