第28話 Knockin' On Heaven's Door

2012年 7月 追記

028_01.jpg 夏の田んぼの夕暮れ。まだ苗が小さい、6月下旬ごろ。(画像は本題とはあんまり関係ありません)

前回「農業は雑草との戦いだぜ!」と書きましたが、もう一つの雑草との戦いの話。

夏場は特に雑草の生長が著しく、果樹園、田んぼの畦など、日々雑草と戦っていますが、
ヤツラはもちろん、田んぼの中にも生えてきます。

028_02.jpg まだ出穂前、7月中旬ごろ。順調な生育です。(中干しの時期で水を抜いている状態)

田んぼの中の雑草、見えますか?
もう少しよってみましょう。

028_03.jpg 出ました。雑草ども。

むむっ!・・・生えてますね。
そして、問題はコイツ。

028_04.jpgコイツが問題の「オモダカ」。

わかります?
この→(矢印)みたいな形のヤツ。
「オモダカ」です。

(農業豆知識 ※オモダカ・・・オモダカ(Sagittaria trifolia)東北を中心に発生する多年生の難防除雑草。矢尻葉が特徴的で白い花を咲かせる。白い塊茎の他に種子も作るが通常の水田では塊茎からの発生が問題となる。近年、SU抵抗性も見つかっている。)

オモダカは、茎の下、根っこの部分が塊茎になっていて(球根みたいな)、引っこ抜こうと茎をむしると、塊茎だけが地中に残って、そこからまた翌年生えてくるという、完全に防除するのが難しい雑草で、難防除雑草といわれてます。

しかも「SU抵抗性」も見つかっている?

(農業豆知識 ※SU抵抗性・・・従来は、スルホニルウレア系除草剤(SU剤)を含む一発処理剤で防除できた雑草だが、これらの雑草ではSU剤に抵抗性をもつタイプが増えてきており水田に残る場合が目立ってきている。)

SU剤に抵抗性をもつ?・・・なぬっ?
抵抗性?・・・除草剤が効かない?!

ということで、最近、除草剤が効かない「スーパー雑草」なるものが発生しているんです。

す、す、スーパー雑草?・・・真面目につけた名称なんでしょうか。

そもそも、雑草の効率的な管理は農家の宿願。それが1980年代に優れた除草剤が次々に登場し、一気に普及しました。ところが同じ除草剤を散布し続けたことで雑草が抵抗性を獲得してしまったというのです。

だいたい、スルホニルウレア系っていうのがよくわかりませんが、稲には全く影響がなく雑草だけを枯らす除草剤があるってこと自体が摩訶不思議ですけど。

むむむ・・・、生命の神秘ですね。(← 感動しているわけではない)

スーパー雑草化したオモダカは、抜いてもすぐに生え瞬く間に水田全体に広り、稲から養分を奪い稲穂の成長を妨げ、収量が例年の2~3割減という被害も、お隣の宮城県などで報告されているそうです。

・・・お、恐ろしい。。。

もしかして、ウチの田んぼのヤツもスーパー雑草か?
そしたら、ウチの田んぼも、2~3割収量が減る?

・・・やべ~

母の話だと、ウチの田んぼでは少し前までオモダカなんて全く生えなかったけど、一昨年あたりから少しずつ見かけるようになったらしく、ウチの田んぼの上流の他所の田んぼで発生して、用水路の水口から塊茎が流れて入ってきたのではないか、と思われます。

そういえば・・・

028_05.jpg6月上旬、田植え1ヶ月後の田んぼ。なんか小さい球根がついた水草みたいのがプカプカと。

6月上旬ごろ、田んぼの水口から入ってきたと思われる水草みたいなヤツを、これが増えると厄介だと、母が言っていました。今思えば、あれがオモダカの塊茎。。。

028_06.jpgコイツら、他所から流れてきてウチの田んぼに根を下ろしやがって。。

水口から入ってきて浮いてる分だけは、できるだけすくって捨てていたのですが、四六時中田んぼにいる訳にもいかず、全て取りきれるはずもなく、結果、相当の量のオモダカが入ってきていたようです。

実は、この画像の2週間くらい前、オモダカに限らず色んな雑草を駆除するために、田植えの後に毎年使っている一発処理除草剤「バッチリジャンボ」を撒いていました。
しかも説明書には「SU抵抗性雑草にも高い効果を示します。」って書いてある。

(農業豆知識 ※一発処理剤・・・水稲移植後からノビエ1~3葉期頃に使用する除草剤。
多年生雑草を含め多くの種類の雑草を一度に防除でき、使用後30~45日の残効期間があるので1回の散布で十分な除草効果がある。現在最もよく使われている除草剤。)

028_07.jpg一年生雑草、多年生雑草まで幅広く高い効果があるという除草剤「バッチリジャンボ」

たしかに、バッチリジャンボの効果か、オモダカ以外の雑草はあまり見かけません。

それでもコイツらだけが増えてきているってことは?・・・もしや

本当に、あの「スーパー雑草」なのでしょうか?(調べてないので不明)

除草剤の専門的な知識は全然ないし、経験もあまりないので、コイツらが実際にウチの田んぼの稲の生育と米の収穫にどの程度影響するかもわかりません。近隣の田んぼの農家に聞いても「そんなの大したことねえ」なんて言って気にもしてない人もいるし。

・・・どうする?

でもそこは、やっぱり「水戸農園」。ウチの作物にはプライドがあります。
畑や田んぼの管理だって、手を抜かずにやらなきゃなりません!

JAの営農指導員さんに聞いて、この時期に使えるオモダカに効果がありそうな除草剤を教えてもらい、薬液15リッター入りのエンジン式背負動噴(総重量20kgくらい)を背負い、田んぼに入って泥の中を歩き回り地道に散布しました。15リッターを7回、計105リッター。

028_08.jpgエンジン式背負動噴(15リッター)除草剤や殺虫剤などの防除散布に大活躍

35℃を超える炎天下、田んぼには日陰は全くありません。田んぼの中をぬかるみながら、
えっちらおっちら歩いていると、頭からも顔からも滝のように汗が流れます。

028_09.jpg田んぼの中を黙々と。。(画像はイメージです。私じゃありません)

汗と泥と除草剤にまみれ、ほとんど熱中症寸前。
しまいには脳みそが溶けてきたのか、体温調整ができなくなってきたのか、顔面は汗ダクだというのに鼻からは鼻水が流れ出てきて、さすがに命の危険を感じて休憩したり。

死ぬかと思いながら、なんとか完了。

・・・これで、

・・・本当に、

・・・効くんでしょうか。


・・・頼む、

・・・効いてくれ・・・。


つづく

このブログについて

山形R不動産仲介担当の水戸靖宏が、ある日突然兼業農家になり、戸惑い、苦悩し、時折愚痴を言いながらも、楽しく農地と向き合っていくストーリー。後継者不足で増え続ける空き農地。山形R不動産では物件ばかりではなく、農地や農業も紹介してしまうのか!?

著者紹介

水戸靖宏(千歳不動産株式会社常務取締役)
山形R不動産における不動産仲介業務担当