第55話 Fool To Cry

2014年 4月
3月末、JAから何やら唐突に「○○○×××の表彰式の案内」が届きました。

さすがJAという感じの用件のみの誠に事務的な書類で、どういった内容の表彰か、自分が何でそこに呼ばれるのかもよくわからない内容。
表彰される覚えも全くないし。。。

JAの表彰式となれば、きっと桐箱に入れて販売するような立派な果物を作っている専業農家のツワモノ達がたくさん出席するに決まっています。

兼業農家の自分としては、そんなライオンの檻に入れられたウサギみたいな場所へはとても行く気にならず、本業の仕事の都合で「欠席」と連絡していたのでした。

数日後、家に帰ると、なんかスゴイ物が届いていました。

055_03.jpgなんと、「ラ・フランス優良賞」の盾と記念品が。

「平成25年度 ラ・フランス共励会 優良賞」!?

「優良賞」って言われても、これがどれぐらいの賞なのか、1位なのか努力賞なのか全く見当つきませんが、まあ、JAてんどうの中だけのごく小さなローカル賞なのでしょう。

ウチのラ・フランスがどういう風に優良だったのか。品質なのか?出荷量なのか?

わざわざJAに聞いてみる気にもならず、どうせ最近農業を継いだ若手農家あたりに一律に表彰してるんじゃないのかと、少し穿った物の見方をしてみたり。

「果実の甘味を増すために○○○を使って土づくりして、樹には×××を与えて・・・」

なんて能書きを言えるような専門知識もなく、ただ父の栽培方法を守っているだけ。
他に何の工夫もしてない自分としては、せっかくですがそれほど感慨はありませんでした。

・・・あと10年後にも自分がちゃんと、父の味と変わらないラ・フランスを作っていたとしたら、その時こそ何かの賞でもいただけたら、きっともっと喜べる気がしますが。


・・・・・・・・・・

そして4月になりました。

剪定作業の終盤(3月中ごろ)から、春が近づき日ごとに日の出が早まってくるにつれて朝のひと仕事が毎日のスケジュールに組み込まれます。

055_01.jpg4月3日、薄暗い中畑に出動、6時前、ようやく日の出。

今年の春は好天続きのため雪融けも早く、春の作業も早まってきているようで、剪定が終わったら少しゆっくり・・・という余裕もないまま、一気に農繁期突入!といった感覚でした。

春の作業は毎年ほぼ同じルーティンで、本格的な農繁期を前に様々な準備や整備など、雑多な作業がたくさんあります。


んで、春一発目は得意の消毒(防除)。

055_02.jpgまずはラ・フランスから、シーズン最初の消毒開始!

シーズンの最初は「休眠期防除」といって、果樹の樹幹や主枝などで越冬する病害虫を、樹木の休眠期(花芽が活動しない春先の早い時期)に駆除する最も大事な防除です。

055_04.jpgもちろん、リンゴも消毒!

リンゴ、サクランボも全部同様に消毒完了。


それから、剪定後の枝の切り口に殺菌剤を塗ったり、昨年とは違う種類のリンゴを高継ぎしたり、畜産農家さんからいただいた牛糞堆肥を撒いたり。
(去年の作業の様子はこちら→第43話参照

そうこうしてるうちに、昨年より5日ほど早く「梅」の花が咲き始めました。

055_05.jpg4月10日、梅が開花。

さらに、最も重要な春作業(自分基準)、稲の苗を育てるため苗代を作り「種まき」を終えたところで、今度はサクランボの花が開花。(去年の種まきはこちら→第44話参照

055_06.jpg4月23日、サクランボが開花。

同じ日、サクランボの開花を待っていたように、あの方達が水戸農園にやってきました。

受粉作業の助っ人、ミツバチさん達です!

055_07.jpg4月23日、ポリネーション用の巣箱を設置。

春、サクランボ生産者にとっての心配事は、いかに多くの花を受粉させられるか。サクランボはデリケートな果樹で、開花時の天候、気温、風、訪花昆虫の働きなど、ちょっとした不順でも受粉障害があると実がつかず作柄に大きく影響します。

そこで水戸農園では毎年、訪花昆虫による花粉交配(ポリネーション)を利用して人工授粉させるため、養蜂業者さんのミツバチを設置しています。

055_08.jpg巣箱を設置して出入り口を開けると、早速ミツバチが出てきます。

ミツバチさん達は一斉に元気よく飛び始めました。

頑張れよ!今年も頼んだぞ!よっ、大統領!!


そして今度は田起し(耕起作業)がウチの田んぼに入りました。

ウチの地区では土地改良区内で農事組合法人を作り、共同で大型トラクターなどを所有して、田起しや代掻きなどを組合で効率的に行います。

055_09.jpg4月26日、組合の大型トラクターで田起し。運転してるのは自分じゃありません。

組合の大型トラクターは45馬力。ウチのヤンマー15馬力の3倍、圧倒的なパワーでみるみる耕起されていきます。田起しは、もちろん田植えの準備。
5月、水が入って代掻きすれば、もうすぐ田植えです。


そして4月下旬、サクランボの花がますます咲き揃ってきました。

055_10.jpg4月29日、サクランボの花がほぼ8分咲き。

春先の天候が順調だったので、サクランボの花も昨年より5日~1週間ほど早いようです。

今年のサクランボが開花してからの天候は、ほぼ毎日、最高気温が20℃以上で、まあまあ悪くはないと思われますが、まだこの時点では結実歩合(豊作か不作か)はわかりません。

サクランボは月末から5月にかけて間もなく満開。

続いて、間をおかずにラ・フランスも、リンゴも、つぎつぎに果樹の花が咲き揃えば、いよいよ本格的に農繁期を迎えます。


そんなんで、あっという間に4月も終わりました。

1月3日、今年の仕事始め以来、まだ1日も休みなし。

これからもっともっと怒涛の忙しさが待っているのに、もう、疲れてます。。


・・・休みたい。


つづく

このブログについて

山形R不動産仲介担当の水戸靖宏が、ある日突然兼業農家になり、戸惑い、苦悩し、時折愚痴を言いながらも、楽しく農地と向き合っていくストーリー。後継者不足で増え続ける空き農地。山形R不動産では物件ばかりではなく、農地や農業も紹介してしまうのか!?

著者紹介

水戸靖宏(千歳不動産株式会社常務取締役)
山形R不動産における不動産仲介業務担当