第5話 オーナーさんに会ってきた

| コメント(1)

偶然がいくつも重なった出来事、そして突然の電話から1週間後の水曜日、僕らはオーナーさんに会ってきた。

朝9時。大学で、持っていく資料をまとめて車で駅へ。始発の新幹線に飛び乗ってきた馬場さんを乗せた。まだ街が動き出したばかりの10時頃、七日町にあるその旅館の前で、僕らはオーナーさんを待っていた。ちょっと早く着きすぎたので、じろじろとこの建物を見て回っていた。

そこにやってきた一台の車。
旅館の前に車を止めて、ゆっくりと車から降りてきたオーナーさん。僕らに会釈をし、こちらにやってきた。「なんだか誠実でやさしそうなおじいさん」そんな第一印象だった。

初対面同士、名刺交換。僕らがやろうとしていることの説明をすることから始まった。
「ここを、ちょっと内装をきれいにして、旅館を復活させたいんですよ。」
「実は東京では、古いビルをきれいにしてオフィスに使っているんですよ。」
「ちょっと収支計算をしてみたら、結構利益が出るんですよ。」

という感じに、この建物が持っているポテンシャルの高さを説明してみた。黙って話を聞いていたオーナーさんは、なんとなく理解できたようだった。
「んだか。んだらば中を見てみっか?(そっか。それなら中を見てみますか?)」
そう言って、かばんの中から鍵を取り出した。

不動産会社からもらった図面上でしか見ていなかった旅館。未知の領域に足を踏み入れる感覚だった。僕らはまるで、どこでもドアを開けるのび太くん達のようだった。


玄関を入って、2階に上がった。北側にあるので暗いのかと思っていたら、結構明るい廊下だった。



採光も十分な、適度な広さの部屋がいくつもあった。



また、廊下の奥にはキッチンがあった。

図面で見たとおり、この旅館はいい物件だった。
僕らは具体的にこの旅館を復活させる計画にするべく、資料用の写真をたくさん撮り、
「ちょっと持ち帰って、具体的な案を考えてきます。」
といってこの日は終わった。

僕がいろいろと写真を撮っている間に、馬場さんがオーナーさんと少し大人の話をしていた。その内容を聞くと、
「昔オーナーさんは公務員で、今は年金暮らし。固定資産税を払っていくだけで精一杯らしい。」

聞けばこの旅館、昔はもっと大きな建物で、100年以上続く旅館だったそうだ。この旅館は代々、ご主人は外に稼ぎに行き、奥様は旅館の切り盛りをしていたそう。しかし、数年前に切り盛りしていた、今のご主人の奥様が亡くなられ、今は休業中だそうです。

昔からこの街にあり、歴史を作ってきた旅館が消えてしまう悲しさを感じながら、僕らは大学に帰った。

コメント(1)

はじめまして。当方山形市内、しかも町中と言われるS町(仮名)に住んでいるものです。

山形新聞に山形R不動産リミテッドが始まるという頃から
よくHPやブログなどを楽しんで拝見しておりました。
こういう発想が素晴らしいなと感嘆しております。

さて、こちらに書き込んだのは上記の理由も然ることながら、
私(と妹)の所有する一軒家などに関してアイディアがあったらいいなと
考えてご連絡した次第です。
物件はおそらく戦前?に建てられたものと、約20年前に建てられたもの
2軒です。
旗竿土地の奥にあるため、
もしかしたらお客さんなんかきてくれないのでは?とか
お客さんに明確なコンセプトを提示できず、結果選ばれないのでは?
等々、いまひとつ踏ん切りができずに時間だけが経っていく毎日です。

さしあたってメール等でご連絡いただけましたら幸いです。

お互いの都合をあわせて現状の確認をさせていただければと思います。

お忙しい中恐縮ですが、なにとぞよろしくお願い申し上げます。