夜、学校から帰ってくると、
「まだこんな時間なのに、なぜキッチンが暗い?」
と思うことがある。
暗くて足下がわからないから、ゆっくりキッチンに向かう。
近づくと、かすかな明かりと音が聞こえる。
そこにはうっすらと、住人がいることに気づく。
何をしているかと思えば、プロジェクターで映画を見ていたのだ。
すごく贅沢だ。
時々、僕もみているが、ほんとにそう思う。
映画を見るときは、だいたい誰かが気になる映画を借りてきたときだ。
「じゃあ、観ますか」
と誰かが言って、みんなで「ただ映画を楽しむ」だけに、スピーカーと、プロジェクター、PCを、ビール片手にセッティングする。
キッチンを暗くし、壁一面に大きく映画を映し出す。
ほんのちょっとだが、この時間がなんだかワクワクして、好きだ。
ほんのちょっとだが、みんなで何かをするのが楽しい。
自分がそういうテンションではないのに、みんながそういう方向に持っていってくれる。
ここではいろんな、不思議なパワーを感じられる。
(文=黒田良太、写真=ミサワクラス)