第3話 理にかなった妄想
僕たち東北芸工大生は変わり者が多い。山形大にこっそり行っても、「あれ芸工大生じゃない?」ってすぐばれる格好の人とか、思考回路が人とは違う人がたくさんいる。山形R不動産に参加している人たちもその部類だ。
そんな僕らが、山形ではただ物件を掲載するだけではどうにもならないという壁にぶち当たって、搾り出した解決策は、
「妄想」
だった。どういうことかというと、どこにでもありそうな空き物件に対して、僕たちが「こう使ったら楽しそうだな」という妄想をして、その妄想を新しい使い方提案として紹介するという策だ。
物件の攻略本みたいなものだけど、建物の大きさとか、周辺環境だとか、建築を学んでいる学生が考えるものだから、一応理にかなった考えになっている。
例えば、近くに美術画廊がある空き物件があるとする。

こんなの。ここを『芸術好きのための、芸術本しか置いていない専門書店』にする。

この近くには美術画廊があり、本屋もあるけど、その本屋は欲しい本を注文すれば取り寄せてくれる普通の本屋だ。「何か面白い本はないかな」という客の願いに答えてくれる『引き出しがたくさんある芸人』のような本屋はない。
この場所には、そういう本屋がほしい。ぶらっと立ち寄る本屋が。
というような提案をウェブサイトで紹介していく。山形R不動産は、芸工大生による『空き物件の新しい使い方カタログ』のようなものが合っているという話になった。

山形R不動産草創期、2009年から2013年にかけて、当時の東北芸術工科大学の学生たちが山形市内の空き物件を探し、実際に再生していったプロジェクトダイアリー

黒田良太
鈴木芽久美
山本将史
工藤裕太
佐藤英人
石母田 諭