2012.1.30

第9話 Good Day Sunshine

水戸靖宏(千歳不動産株式会社)
 

2011年9月
夏りんご「つがる」の収穫を終え、9月です。お日様はカンカン、まだまだ暑さが続いています。

今年の夏は暑かった。
「オレのハートが」じゃなくて、気温が。(・・・ハートも暑かったですけど)
ずっと外で仕事していたからそう感じるのか?

9月の田んぼ。稲作には日照時間が大切。出穂して1ヶ月足らずでこんなに育ちました。(でも、また雑草が・・・)

夏場は早朝5時から7時ごろまでの朝仕事でTシャツが汗でビジョビジョ。
着替えて朝飯食って出かけ、午前中でまたビジョビジョ。
昼食後に着替えて出かけて夕方までにまたビジョビジョ。
ほとんど毎日、一日3~4回着替えなきゃなりませんでした。

その汗でビジョビジョのTシャツを毎日大量に洗濯している妻は、「Tシャツ、汗臭いから他の洗濯物と混ぜないで!」と、私の洗濯物を家族の洗濯カゴに入れるのを拒否。「農作業着専用バケツ」を設置され、なんか、娘に「パパの洗濯物臭いから私の服と一緒に洗濯しないで!」って言われてショック受けてるお父さんの気持ちが理解できたりして。・・・ううう(涙)

統計上は全国的に「猛暑」の夏ではなかったようですが、Yahoo天気で振り返ってみると、8月は全く傘マークがありません。そういえば、いつ降ったのか記憶がありません。
天童付近での8月の降水量は1ヶ月合計 25.5ミリ。
9月1日から15日までの降水量は合計 6.5ミリ。
・・・たったの6.5ミリ。・・・干ばつです!
(専門的に、この期間でこれぐらいの降水量を干ばつと言うかはわかりませんけど)

長年農業をしている母は、その経験から「こだい雨足んねど、木がおるべは~」(日本語訳「こんなに雨降らないと果樹が弱っちゃうよ~」)と心配しはじめました。

園地を回ってみると、確かに地面は乾燥してガンガンに固まり、果樹の葉が水分不足でシナ~っと下を向いているじゃありませんか。ヤバい。これは問題です。
果樹農家「水戸農園」にとって何より大切な果樹を守らないと。

・・・・でも、どうすれば?・・・・
・・・・・・・
そうです! こんなときは、当然、ドラえもんです。タリラリッタタ~

もとい、スーパーお助け営農マシーン「灌水ポンプ」の登場です!
それにしても、さすが、専業農家40年の父。農業のいろんな作業に必要な機械も道具も、農機具小屋を覘けばなんでもあります。本当にドラえもんのポケットみたい。

灌水用エンジンポンプ。画像左下(写ってませんが)に大きな用水路が流れていて、そこから水を汲み上げます。

ウチの田んぼの横には比較的大きい用水路が流れていて、夏でも水が涸れたりしません。画像の下方に伸びてるホースで水を汲み上げ、右方に伸びてる青いホースで果樹園まで流します。

灌水用エンジンポンプ。画像左下(写ってませんが)に大きな用水路が流れていて、そこから水を汲み上げます。

画像でもわかるとおり、田んぼに水を引くための小さな水路は、この時期は水を止められていて雨が降らないときはほとんど水が流れていません。農業用水は田んぼのためだけでなく、その時期ごとにいろんな農地に使用できるようになっています。

言うまでもなく、「いのちの水」っていうとおり農作物にとって「水」はまず最初に絶対必要なもの。農業地帯ではその河川や耕区単位で「土地改良区」や「水利組合」などの団体をつくり用水路を整備して厳しく管理され、その団体に加盟していない人は水路の水を使えません。同じ農家でも、他の地域の人が自分の所属地域外の用水路からタンクに水汲みなんかしていたら怒られます。それほどに、農家にとって「水」は大切。。

農家以外の人には、そういう事情はほとんど知られてないので、ただの「水路」でしょうけど。

ポンプから向こうに見えるサクランボ園まで、約70mくらいホースを農道沿いに引っ張ります。

今日は田んぼの隣にあるサクランボ園に水をかけます。サクランボは7月上旬でとっくに収穫を終えていますが、当然、夏場も果樹の管理は大切。水をタップリと与え、生き生き元気に育てないと。来年も美味しいサクランボが実ってくれますように。

ここからサクランボ園へ引き込み。待ってろよ~サクランボちゃん。いま水をあげるからな。

ここからサクランボ園へ引き込み。待ってろよ~サクランボちゃん。いま水をあげるからな。

青いホースを継ぎ足し継ぎ足し、延々100m以上のホースを使います。

そして、ホースの先にはスプリンクラー。う~ん涼しげです。画像右に見えるのは受粉用の蜂小屋。

もういっちょスプリンクラー。1台のポンプから一度に3台のスプリンクラーに繋ぎます。

よ~し、頼りになるぞ、ポンプ1号。スプリンクラーもいい調子で回っています。スプリンクラー1台で、半径20mくらい水をかけることができます。そして数時間ごとにスプリンクラーの位置をこまめに移動して、サクランボ園全体にかかるようにします。


それにもちろん、干ばつで水が足りないのはサクランボ園だけじゃありません。ラフランスもリンゴも全ての果樹園で水かけが必要です。木が弱ったりしないように、美味しい果実が実るように。


こんな風に、9月のはじめの数日間、果樹園への水かけを朝から晩までやっていたのでした。

灌水作業を終え、最後に100m以上のホースを、屈んでクルクル巻き取る(雪ダルマ作るみたいに)のが一苦労。
翌日から二日間、腰痛で会社に行けませんでした。・・・・・またかよ


つづく

このブログについて
 

山形R不動産メンバーの水戸靖宏が、ある日突然兼業農家になり、戸惑い、苦悩し、時折愚痴を言いながらも、楽しく農地と向き合っていくストーリー。後継者不足で増え続ける空き農地。山形R不動産では物件ばかりではなく、農地や農業も紹介してしまうのか!?


著者紹介
 

水戸靖宏(山形R不動産/千歳不動産・マルアール代表)
山形R不動産の代表であり、千歳不動産株式会社の代表取締役、そして株式会社マルアールの代表も務め、さらに現役の兼業農家として、ラ・フランスやさくらんぼを栽培。

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