第40話 Stardust
2013年 1月 追記
雪が止み一日晴れた日の翌朝、気温が氷点下10℃近くまで下がっていました。
いつも通り剪定しにラ・フランス園に行ってみると、
「!!!・・・???・・・」
なんか、雪に覆われた畑がキラキラ光ってました。
「こ、これは・・・あの・・・PM2・5 ?!」
・・・ウソです。
・・・すみませんでした。
もとい、
「こ、これは・・・もしや・・・ダイヤモンドダスト?!」

見える?空気も畑もキラキラ。
それは、生まれて初めて見る光景でした。

画像にはうまく写ってませんが。。雪の地表付近が光ってます。
なんとも神々しく、感動というか、心が洗われるというか。。
暑くても寒くても、雨でも雪でも、懲りずに畑に通っていると、たまには珍しいものに出くわすもんです。なんか、得した朝でした。
気象学的に、山形で本当にダイヤモンドダストが見られるのかは知りませんけど。。
年末から1月上旬にかけて割りと天気もよく、時々は弟が手伝ってくれたこともあって、ラ・フランスの剪定作業は順調にすすみ、早くも1月中旬までに完了することができました。
次はリンゴ。昨年までに手が回らず減らしてしまったので、残ったリンゴは約30本だけ。
ラ・フランスよりも本数少ないからもっと簡単か?というと、そう甘くはありません。
ウチのリンゴは50年近い古木も数本あって、ラ・フランスの2倍以上の大きさの木もあり、一日かかってやっと1本できるかどうか。
さらに、リンゴは一番手がかかり、美味しく育てるのが一番難しい、繊細な果物。
したがって剪定も一番難しく手間がかかるのです。(← 自分基準)
そしてラ・フランス園の次に家から遠いのがリンゴ園。農道が雪で閉ざされると、四駆のトラックでもリンゴ園まで行けなくなってしまします。前話でも触れましたが農道は通常は除雪されないので、本格的な積雪の前に、できるだけ剪定を進めなければなりません。
※道路の除雪・・・雪国では住民の生活や交通のために、道路の管理者(国道は国交省、県道は県、市道は市)ごとに除雪基準を設け、一定の積雪時には深夜から機械での除雪作業が行われる。積雪の多い所では自治体ごとにこの作業だけで数億円もの費用がかかるため、幹線道路や生活道路など交通量の多い重要路線から優先的に行われ、交通量の少ない路線では除雪が行われない場合もある。

道路の除雪風景。(参考画像)
※農道の除雪・・・農道は農村地域において農業の用に供するために設けられた道路であり、「道路法」に基づく道路の区分ではないため、所管は国交省ではなく農業を管轄する農水省となる。このため、冬期間の除雪はほとんど行われない。
この間、連日少しずつ雪が降り積もり畑の積雪は40cmを越えていました。
もちろん、誰も通っていない農道にも40cm以上の積雪。
・・・畑まで行けるのか?
という不安がよぎりながら、でも、とにかく行くしかありません。
1月19日、いざ、リンゴの剪定に出陣です!
リンゴ園に向かうと、予想通り除雪された市道から農道への入口は40cm以上の雪の壁。
そしてその向こうに続く農道も、すっぽりと雪に埋まり誰も通った形跡はありません。
・・・くっそー!・・・負けねえ!・・・行ってやる!!
という誠に男らしい(無謀な?)判断で、我が愛馬ライトエーストラック4WDのアクセルを踏み込みました。まるで、武田信玄の本陣に単騎で斬り込んだ上杉謙信のように。
ライトエーストラックは新雪を掻き分け、蹴散らし、雪煙を上げながら、まだ誰も足を踏み入れていない、まさに前人未踏の農道へ突っ込み、進んで行きました。
・・・そして!
やっぱり、四駆のトラックなのに雪でスタックして動けなくなって、また近所の修理工場のオヤジに助けてもらうハメになる、という間抜けな状況を、みなさん期待してますよね?
はい!残念!! 今回は無事にリンゴ園まで辿り着きました。
それにしても農道、酷い積雪。トラックの腹で雪を削りながら、一度止まったら間違いなく動けなくなるであろうというギリギリの状態。必死に辿り着いたというのが実情。

今来た道を振り返ると・・・。ワダチの間の積雪にトラックの腹で削った跡が。
そして、駐車場(リンゴ園への入口のサクランボ雨よけハウスの柱の間)にも当然積雪40cm以上。こんな大雪の日に剪定しに行く農家はほとんどいませんから、おそらく前の農道は誰も通らないと思いますが、ジェントルメンとしては路上駐車する訳にもいきません。

ライトエーストラック。四駆でもこれぐらいの積雪がギリギリ。
路上でしばし呆然と立ちすくんでいましたが、気合を入れて十回睨んでみたものの、雪が左右に開けて駐車場ができるわけもなく・・・。
(モーゼじゃねえんだから・・・。しかも、十戒だし。十回睨んでどうする!← 一人つっこみ)
・・・しょうがねえ。駐車場、作っか。
掘りました。人力で。
都会では「雪かき」なんて上品な言い方しますが、雪国ではそんなもんじゃありません。
「かく」じゃなくて「掘る」の方が正確です。

スコップ1本で、地道に。
えいこら、ひいこら、地道に雪掘り1時間。

やっと、一台分完成!
さらに、剪定の師匠Aさんや、弟が来たときのために、もう一台分で1時間。

ついに、二台分の駐車場が完成!!
雪掘りしてるうちに晴れてきて、絶好の剪定日和ですが、ほぼ午前中は雪掘りで終了。
そして、やっとの思いでリンゴの剪定開始です!

リンゴの木がオレを待ってるぜ。
これから2月末にかけて本格的な積雪のシーズンになり、一番難しいリンゴの剪定ということもあって、ラ・フランスほど順調には進まないと思われます。
2月いっぱいでリンゴの剪定終われるかな。。(← 目標)
でも最近、この剪定作業が面白く感じ始め、週末にはソワソワしている自分がいます。
どんなに雪が降っても、寒くても、一人、木と向き合う。
見栄も愚痴もなく、ただ黙々と真剣に、己と向き合う。
・・・修行僧か?
つづく

山形R不動産メンバーの水戸靖宏が、ある日突然兼業農家になり、戸惑い、苦悩し、時折愚痴を言いながらも、楽しく農地と向き合っていくストーリー。後継者不足で増え続ける空き農地。山形R不動産では物件ばかりではなく、農地や農業も紹介してしまうのか!?

水戸靖宏(山形R不動産/千歳不動産・マルアール代表)
山形R不動産の代表であり、千歳不動産株式会社の代表取締役、そして株式会社マルアールの代表も務め、さらに現役の兼業農家として、ラ・フランスやさくらんぼを栽培。