第28話 使う人が、決まりました。
この物件と出会い、今まで新聞にも掲載して、オープンハウスもしてきた。
長い時間をかけて、この建物を使う人はどんな人か考えた。
そもそも、使う人も決まっていない、建物のリノベーションもしていない状態で、オープンハウスはしない。順番が違う。
興味のある人を連れてきては、考えがフィットしない、の繰り返し。
効率も悪かった。
でもそれは、この建物を長く使ってもらうための、「手間」だった。
手を抜くことはできるけど、手を抜いただけボロが出てくる。
そう思ってかれこれ5ヶ月くらい、いろんな手を使い、この建物と使い方がフィットする人を探し続けた。
そしてついに、オーナーさんとの話し合いの結果、使う人が決まりました。

この2軒の建物を使う人は、アートジュエリーをつくる人です。
この古い建物はアトリエに、新しい建物は住まいに再生されます。
今後ここは、「アトリエ+住まい」として、働く場所と住まいの関係がコンプレックスされた場所になっていきます。
今の時代、働く場所と住まいは離れた場所にあるのが多いですが、ここでは、その関係がとても近くなります。
一度離れてしまったその関係を、突然修復することは、難しいかもしれませんが、働く場所と住まいの関係がコンプレックスさせることで、新たな仕事が生まれると思います。

トマトも赤く色づき始めた畑も、それを後押しすると思います。
空間をつなぎ、仕事とプライベートを適度にボーダレスにしてくれることでしょう。使う人の実家では野菜を育てているそうです。この畑も、仕事のあいま、休日に、十分に使われるでしょう。
仕事なのか、趣味なのか、白黒はっきりしない、グレーなところにこそ、新しい可能性が眠っていると思います。
これからは、この建物、畑がどのように変化していくかを、伝えていきたいと思います。
ここを使う方々の紹介は、またの機会に詳しくお話をします。
お楽しみに。

山形R不動産草創期、2009年から2013年にかけて、当時の東北芸術工科大学の学生たちが山形市内の空き物件を探し、実際に再生していったプロジェクトダイアリー

黒田良太
鈴木芽久美
山本将史
工藤裕太
佐藤英人
石母田 諭