第15話 Like A Rolling Stone
2011年11月中旬
晩秋。最近は最高気温が10℃を下回る日もあり、寒さを感じる季節になってきました。自宅から果樹園へ向かう車内から見える風景にも、冬がそこまできているのが見えます。

ウチの果樹園付近から村山平野の西方面を眺める風景。
左が出羽三山の奥の院として古からの信仰篤い霊峰「月山」。
月山の右に寄り添うように葉山。月山はもうすっかり雪を被って真っ白です。
我が家は村山平野の東端に位置していて、家から西を望むこの風景を、幼い頃からずっと眺めてきました。
そして過ぎる季節を惜しむように、大収穫祭 秋の陣 第2弾!
今日はリンゴ「サンふじ」の収穫です。

朝露に濡れた「サンふじ」綺麗に色づきました。
第7話の「サンつがる」(7話参照)と同じ理屈ですが、果実に袋をかけず太陽の光を浴びて育てるため「サンふじ」という名前で出荷されます。
この地域で採れる「ふじ」は、山形盆地特有の"夏は暑く冬は寒い"気候によって、果実にジューシーな蜜がたくさん入り、「蜜入りサンふじ」として有名です。
収穫の作業は「ラ・フランス」のときとほほ同じ。

まず、ハケゴに収穫して、
ここで母、初登場です。(寒い日だったので上下カッパですが)

特設本部(?)に運び、選果担当の母が選果してコンテナに丁寧に並べて入れます。
なにしろ、キャリア40年以上の母。選果させたら手の早さ、丁寧さ、選果の確かさでは誰も敵いません。
一つ一つ丁寧に傷や痛み、サイズを見分け、振り分けてコンテナ詰め。
この作業は、一時選果といって、収穫したハケゴからコンテナに移す時点で、ギフト用、出荷用、加工用、規格外と選別します。収穫したその場で一時選果することで、その後の販売までの工程(箱詰めなど)と、JAへの出荷の効率がいいのです。
(畑で収穫した果実を全て自宅へ持ち帰ってから選果して出荷する農家もあり、作業の仕方は農家ごとに様々ですが)

そして選果後のコンテナを運搬車やネコ(ネコ車=一輪車)でトラックまで運び、

トラックに積み込んで 40ケースずつJAへ出荷。
ご存知、
収穫 → 選果 → JAへ出荷。
収穫 → 選果 → JAへ出荷。
収穫 → 選果 → JAへ出荷。
・・・を繰り返し、なんとかリンゴの収穫を全て終えました。
今年は兼業農家一年目で、とても手が足りず夏期管理ができなかったため、途中で地元の農業法人さんに一番大きなリンゴ園(約60アール)を貸してしまった(2話参照)ので、この品種で収穫したのは残り約20アールの分だけ。
収穫量は、昨年までの5分の1以下で、JAへの出荷は約200ケース(約4トン)程度のみ。
JAへの出荷の他に、ギフト用産地直送で客先へお送りする分を自宅へ運んだりもしましたが、それもいつもの3分の1くらい。
毎年ご購入いただいていたお客様へも、既にお詫びの手紙をお送りして、リンゴのギフト発送は一部お断りしました。
リンゴは、サクランボよりもラ・フランスよりも一番収穫時期が遅いため管理期間が長く、手がかかり、美味しく育てるのも一番難しいと言われます。
でも、その分逆に、プロの自慢の対象となるのがリンゴです。この地域の専業の果樹農家に「一番の自慢は何?」って聞くと、ほとんどの方がリンゴって答えるくらい。
元「くだもの職人」だった父の自慢もリンゴだったな。。。
収穫の時は、一番美味しそうな真っ赤なリンゴを必ず家に持ち帰り家族に食べさせて、
「オレのリンゴ、うまいべ!」って言ってたのが思い出されます。

今年も、味自慢!水戸農園のリンゴができました。いつか是非みなさんにも!
「よ~~し、オレもオヤジに負けないリンゴを作れる兼業農家に絶対なってやる!」
と、心に誓ってはみたものの、まったくアテはありません。
とにかくこのまま転がっていくしかない、残念な後継者なのでした。
つづく

山形R不動産メンバーの水戸靖宏が、ある日突然兼業農家になり、戸惑い、苦悩し、時折愚痴を言いながらも、楽しく農地と向き合っていくストーリー。後継者不足で増え続ける空き農地。山形R不動産では物件ばかりではなく、農地や農業も紹介してしまうのか!?

水戸靖宏(山形R不動産/千歳不動産・マルアール代表)
山形R不動産の代表であり、千歳不動産株式会社の代表取締役、そして株式会社マルアールの代表も務め、さらに現役の兼業農家として、ラ・フランスやさくらんぼを栽培。