2013.7.22

第44話 You Can't Always Get What You Want

水戸靖宏(千歳不動産株式会社)
 

2013年 4月下旬
またまた久しぶりのアップです。

このひと月余り(6月中旬~7月上旬)、例の 山ごもり じゃなくて 入院 じゃなくて、 5月病 でもなくて、そうです。サクランボの収穫のために会社を休んでいました。

いくら不動産業ったって「そんな自由な会社あるのか?・・・」とよく言われますが、そんな会社あり得ませんよね、普通。会社の許可を得て、というより強制的に休暇届けを出してほとんど出社拒否に近い状態。

ほんと~に、社員の皆様、申し訳ない!

といった訳で、久々に出社してみたら奇跡的にまだ席がありましたので、無事に(?)復帰しております。そして話が少しさかのぼりますが、徒然に農園のことを振り返ってみます。
どうぞ、お付き合い下さい。

4月下旬、春の雑多な作業をしている間に、自家用の梅の花が開花していました。

4月19日 梅の花。五分咲きくらい。

そしてサクランボの花芽も大きく膨らんで今にも開花しそう。

4月19日 サクランボの花芽。

今年は3月から4月上旬にかけて気温が高く、全国的に桜の開花が早まり、西日本では過去最早で開花した所もありました。ただ、4月中旬以降は低温が続き、東北と北海道では逆に平年よりも桜の開花が遅れた所もありました。

結局、山形では桜の開花はほぼ平年並みとなりましたが、こういう気候の変化が果樹の開花とその後の結実にも影響してきそう。

これから4月末にかけて、サクランボ、ラ・フランス、リンゴと次々に花が咲き始めます。

そんな春の真っ只中、春作業の中では最も重要な仕事、田植えに向けて稲の『種まき』をしました。水戸農園は果樹農家なので、ほとんどが自家消費用で、米の出荷はわずかな量だけですが、それでも先祖代々十代続く百姓として米作りはおろそかにはできません。

今年も山形のブランド米「はえぬき」の種籾を準備、田植えの時期から逆算して約1ヶ月前に種まきです。実は半月ほど前から、①種籾の消毒 → ②浸種(種籾を水に浸す) → ③催芽(温水に漬けて芽出し)という種まきの準備(これも重要な作業)をやっていました。

※「はえぬき」:山形内陸産はえぬきは食味ランキングにおいて14年連続で特Aを認定されている超優良銘柄。味ではブランド米の魚沼産コシヒカリに全くひけをとらないが、山形県外での作付けがほとんどないため、味のわりに知名度が低く比較的安価で取引されている。冷めても味が落ちにくいことから、おにぎりや弁当用の炊飯米として向いているため弁当業者などの業務用米としての需要が高く、特にセブン-イレブンのおにぎりの多くに使われているのが山形県産はえぬきであると言われている。

『種まき』の作業は、まず苗箱を並べる寸法(縦30枚×2列分)を取って水をかけ、平らに均して苗代を作ります。

4月20日 今日は種まき。まず苗代を作って・・・

苗代に、床土を入れた苗箱を水平に高低差が出ないように丁寧に並べていきます。

床土を入れた苗箱。でこぼこにならないように並べて・・・

そして、久々の営農メカ登場!「手押し式種まき機」だ!!(正式名称不明)
種まき機を苗箱の枠に沿ってそろそろと押して、一定の量の種籾を敷き詰めていきます。

スーパー手押し式種まき機「種まきくん」。

全ての苗箱に種まきが完了。種まき機の押し方が一定のスピードじゃないと、種の播き具合にムラが出てしまいます。その場合、手で追加したり均したりして調整。

種まき完了。母が手作業で播き具合を手直し。

今度は、種まきくんに覆土を入れて同じようにそろそろ押して、種が敷き詰められた苗箱全体を覆うように土をかけていきます。

種を播いた苗箱に平らに土をかけて・・・

全ての苗箱に土かけが終わったら、苗代にアーチを組んでトンネルハウスを作り、ビニールで覆い、育苗ハウスの完成。これから田植えまでの間、ここで苗を育てます。

育苗ビニールハウス。初登場!妻も手伝ってくれてます。

!!!

甥っ子の愛犬「りんご」も種まき作業を見守ってくれてます。

育苗ハウスは、苗を順調に育てるために常に温度管理をしなければなりません。天気と気温によってビニールを開けたり閉めたり、特に寒い日にはビニールの上からさらに保温シートをかけたり。こういう管理を田植えまでの1ヶ月間、毎日行います。

種まきの翌日、気温が下がってきたため、保温シートをかけました。

ハウス管理は、天候や気温の変化によってこまめに一日に何度もやらなければなりません。近隣の農家ではその管理を怠り、高温で苗が焼けてしまったり、低温で生育不良になったりという苗作りの失敗談を毎年よく聞きます。

実際、種まきよりもその後の育苗の管理が一番重要ともいえます。これは平日家を留守にしている私にはとても無理。なので、この作業は今年も母を頼りにせざるを得ません。

やっぱり農業という仕事は家族みんなの協力がなければやっていけない。

「兼業でもなんとかやってやる・・・」なんて意気込んでみても、兼業の限界、それが現実。

そして種まきの翌日、4月も下旬になろうというのに季節はずれの雪が。。
山形でも、桜の開花のあとの降雪は数十年ぶりだそうです。

4月22日 前日の雪が残る中でリンゴの消毒。

いまにも開花しそうな果樹の花芽にも遅い雪の影響が心配されます。

人の力では及ぶはずもない自然相手の農業。

いつでも人が望むようには、描いた筋書きどおりには、決していかない。


これも現実。


つづく

このブログについて
 

山形R不動産メンバーの水戸靖宏が、ある日突然兼業農家になり、戸惑い、苦悩し、時折愚痴を言いながらも、楽しく農地と向き合っていくストーリー。後継者不足で増え続ける空き農地。山形R不動産では物件ばかりではなく、農地や農業も紹介してしまうのか!?


著者紹介
 

水戸靖宏(山形R不動産/千歳不動産・マルアール代表)
山形R不動産の代表であり、千歳不動産株式会社の代表取締役、そして株式会社マルアールの代表も務め、さらに現役の兼業農家として、ラ・フランスやさくらんぼを栽培。

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