2014.3.5

第51話 A Hard Rain's A-Gonna Fall

水戸靖宏(千歳不動産株式会社)
 

先日、東京R不動産10周年記念のイベントに参加してきました。
夜の公開新年会では、全国のR不動産(9団体)の代表が各地の「アツい物件対決」と称してそれぞれが持ち寄ったアツい物件をプレゼン。

もちろん私も山形代表として参加。
「蔵王温泉 温泉付リゾートマンション 源泉の温度は66℃!」という激アツ物件をプレゼンして、「アツいって、温度が?」という狙い通りのツッコミを入れられつつ、集まってくれた100人を超えるお客さんの失笑をいただいちゃいました。

いつもは会社以外に出かけるといえば畑。
寝ても覚めても畑、な生活ではありますが、実はたまには、山形R不動産に関わりつつ全国のR不動産のみなさんと交流したりして、いい刺激をもらったりもしているんです。

そしてもちろん、山形R農園のPRもちゃんとしてきました。
今年は水戸農園の果物が、全国で旋風を巻き起こすことでしょう(か?)。

さて、秋の農園をふり返ります。


2013年 10月
稲刈りが終わり、いよいよ実りの秋。
ラ・フランスもリンゴも、果実が大きく育ってきて収穫を待っています。

ラ・フランスの収穫まであと2週間

リンゴの収穫まであと4~6週間(晩成種ふじ)

9月下旬からは、リンゴの着色管理のため葉摘み(葉っぱとり)作業。 ラ・フランスは着色不要ですが、リンゴはやっぱり真っ赤で大玉なものが市場価値が高いため、面倒な作業ですが一枝一枝地道に葉摘みしなければなりません。

before 果実に葉っぱがくっついて日が当り難くなっています。

after 日当たりの邪魔をしている葉を取ってみると、陰になっていた部分はまだ真っ青。

さらにこの後、上からだけでなく下からも日が当るように反射シートを敷いたり、果実をひっくり返して裏側になった部分を表側に回したり(玉回し作業)。
着色管理が必要な分、リンゴの生産はラ・フランスの数倍手がかかります。

反射シートを敷いて、果実の裏側まで日があたるように。

果実の裏側まで真っ赤に色づくように。大玉で美味しい高品質なリンゴに育つように。 それだけを祈りながら、5月の開花から11月の収穫まで大事に大事に育てるのです。

その手間をかけた分だけ、真っ赤な美味しいリンゴができたときの喜びも大きい。
こういうところが、リンゴ農家の楽しみなのでしょうね。。
なんて、他人事みたいな言い方ですが、ちょっとずつ自分もわかってきた気がします。

・・・・・・・・・・

そんな実りの秋。
まもなく収穫というタイミングで、毎年ヤツがやって来ます。
秋の果物にとっては、魔の最終コーナー、まさに最後の難関。

・・・台風です。

地球規模の異常気象が心配される昨今。
今年は特に東北に直接影響を及ぼす台風が多かった気がします。
その脅威は、早くも9月中旬から襲来。

9月16日~17日 台風18号が上陸

台風18号は各地に被害を及ぼしながら愛知県付近に上陸、福島県を通過して三陸沖に抜けて行きました。翌日見回りしてみると、やはりラ・フランスに多少の被害が。

9月17日朝 ラ・フランスが少し落果。

全体の収量からみれば、これぐらいは大した被害ではないと言えるのでしょうけど。 山形への直撃は免れましたが、台風情報を注目しながらかなりビビりました。

ホッとしたのもつかの間、10月、ヤツはまたやって来ました。

10月9日~10日 台風24号

今度は日本海側から台風24号。 沖縄から北陸にかけて大きな被害をもたらし、北陸沿岸で温帯低気圧に変わり、一安心かと思いきや強風を巻き起こしながら東北を通過。

今回は大丈夫だろう。
と思いながら見回ってみると、あれ?ゴルフ練習場みたいな風景?
温帯低気圧とはいいながら、実は前回よりも落果が多いような・・・。

9月11日 またラ・フランスが落果。

強風や大雨で甚大な被害を受けた地域の方からみれば、大した被害ではない訳ですが、特にラ・フランスは大玉で重い果実から落果してしまうので、これでも結構残念。

そして、間髪を入れずにまたヤツが。
今度は台風26号。伊豆諸島に土石流による甚大な被害を及ぼし、関東をかすめて北上、三陸沖に抜けて行きました。

10月16日~17日 台風26号

台風の進路予想を睨めながら、今度という今度はさすがに被害を免れないんじゃないか?という危機的な状況が予測され、経営者としては冷静な判断が求められました。

幸いにも、JA天童のラ・フランスの出荷受け入れ期間が今年は10月15日から25日までだったので、10月18日から予定していた収穫を、急きょ15日からに変更。

このままなす術もなく指を咥えて見ているより、台風が来る前に収穫を選択!

10月15日 急きょ収穫開始!

収穫初日は嵐の前の静けさか、晴天の中で順調に収穫。 徐々に台風が近づいてきた二日目は次第に雨脚が激しくなる中、カッパを着て家族総出で収穫。

収穫の傍ら急いで出荷!

早朝から休憩なしで雨の中でも収穫。 夜8時近くまで、車のヘッドライトを照明代わりに照らして収穫、二日間で全て終えるという荒業でなんとか乗り切りました。

自分の的確な(?)判断と、家族の協力によって、台風被害もほとんどなく計画通りの収量を確保、無事にラ・フランスの収穫を終えることができました。

フタを開けてみれば、今回も間一髪で山形への台風の直撃は免れたのですが。今年は毎回、マトリックスの弾丸除けみたいに、頭の上や横1cmをかすめる、みたいな。

実は10月15日、16日は平日。
ご存じ、兼業農家の私は当然会社へ出勤のはずでしたが、

「すみません。台風来てラ・フランスが非常事態なんで会社休ませて下さい。」

という無茶な連絡により、二日間ラ・フランス休暇をとって収穫。
「いいのか?」と、内心葛藤はあっても、こうなってしまうのが現実。

本当に、会社と社員のみなさんには申し訳ない。
重ね重ねご迷惑をおかけしております。


つづく

このブログについて
 

山形R不動産メンバーの水戸靖宏が、ある日突然兼業農家になり、戸惑い、苦悩し、時折愚痴を言いながらも、楽しく農地と向き合っていくストーリー。後継者不足で増え続ける空き農地。山形R不動産では物件ばかりではなく、農地や農業も紹介してしまうのか!?


著者紹介
 

水戸靖宏(山形R不動産/千歳不動産・マルアール代表)
山形R不動産の代表であり、千歳不動産株式会社の代表取締役、そして株式会社マルアールの代表も務め、さらに現役の兼業農家として、ラ・フランスやさくらんぼを栽培。

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