第29話 Holidays In The Sun
2012年 8月
それにしても、この夏は毎日毎日毎日・・・暑かったですね。
汗をかかずに外にいられるのは、早朝、日の出までの30分間くらい。

8月上旬、農園の夜明け。今日も暑くなりそう・・・いや、絶対暑い!
7月下旬の梅雨明け以降、8月はほぼ毎日が真夏日、35℃、37℃の猛暑日なんてざら。

農機具小屋の気温計。この日も36℃を超えてました。
しかも今年は空梅雨(からつゆ)で、さくらんぼの作業を終えた7月上旬から、ほとんど雨が降っていません。農家どうしが顔を合わせると、「お天気の話が挨拶代わり」なんていいますが、ホントに会う人会う人全員が
「毎日暑くて仕事になんねぇ。干ばつで果樹も葉っぱが萎れて弱ってる。雨欲しいな~。」
っていう会話をしています。
昨年9月も、同じように干ばつ(旱魃)を心配していましたが、今年は梅雨明け早々から水不足。あまりに暑い気温と降水量不足は、昨年以上に深刻です。。
干ばつは、これから秋に収穫する果実の生育はもちろん、来年の花芽の形成にも大きな影響を及ぼします。(翌年再び花を咲かせ果実を実らす花芽は前年夏の6月~9月ごろに形成される)つまり、今現在の水不足が来年の果実の収穫量にも大きく影響する訳です。
ということで、また今年も灌水作業(水かけ)開始!
井戸やすぐそばの川から汲み上げられる園地では、灌水ポンプ+スプリンクラーで一日ポンプを回しっぱななしで水かけをします。(第9話参照)ウチのサクランボ園とリンゴ園には、井戸や川があり、ポンプとスプリンクラーを設置して放っておけるのでまだ楽です。ところが、井戸も川もないラ・フランス園(約40アール)には、別の園地の井戸からSSのタンクに水を汲んで運んでって水かけをしなきゃなりません。(第10話参照)
SSのタンクは1000リットル。JA推奨の灌水作業は果樹成木1本につき500リットル。SSタンク満タンで水を運んで2本の木にしか水かけできない。水かけが必要なラ・フランスの木は約100本。・・・気の遠くなる作業です。

灌水ポンプ
井戸からポンプアップして・・・

ホースでSSへ
灌水ホースでSSへつなぎ・・・

タンクへ水汲み
SSのタンクへ水を1000リッター汲んで・・・

行くぜ!SS!
ラ・フランス園まで移動して・・・

水かけ
ラ・フランスの一本一本に丁寧に水かけ。
・・・
炎天下、これを延々と。。
最短でも一往復30分以上かかり、実質一日10往復程度が限界。
8月中旬までの休日(土日とお盆休み)のほとんどを水かけに費やしました。
一本あたり500リッターかけた、といっても、日照りでガンガンに固まった地面にはあっという間に浸み込み、表面はすぐに乾いて、どこに水かけたかもわからない状態・・・
水かけ、少しは効果あるんでしょうか。
しかも、雨が降れば、やらなくてもいい作業。
雨さえ降ってくれれば・・・
って、だんだんネガティブになっていく思考を無理やり切り替え、絶対に無駄じゃない!これできっと、いいラ・フランスに育つんだ!と心で繰り返しながら、最後には「雨乞い」のつもりで水かけを続けました。
意外と、苦労して水かけ終わった途端、雨が降ってくることが多いんです。
・・・ほんとに「雨乞い」だよ・・・
そんな暑~い8月の夕方、家の窓から何気なく外を見ると、何やら見かけない物体が。
・・・んんん?

アミ戸のフレームに何か・・・
・・・アミ戸のフレームにクレセント(鍵)なんかついてたか?

アミ戸の外側に変な生きものが。
そ~っとアミ戸を開けて外側からよく見ると、なんかネズミみたいな生きもの発見。

おおっ、コウモリだ!
よく見ると、コウモリの赤ちゃん(か大人かは不明)が。
コウモリもあまりの暑さに、ウチの軒下に逃げ込んで必死にアミ戸にしがみついたんでしょう。とっ捕まえてやろうかとも思いましたが、なんとも健気な寝顔に、そっとしておくことにしました。ソイツは、夜の間に飛んでったらしく、翌日にはもういませんでした。
連日の猛暑と水かけ作業の疲れも、なんだか可愛いゲストに癒された気分でした。。。
つづく

山形R不動産メンバーの水戸靖宏が、ある日突然兼業農家になり、戸惑い、苦悩し、時折愚痴を言いながらも、楽しく農地と向き合っていくストーリー。後継者不足で増え続ける空き農地。山形R不動産では物件ばかりではなく、農地や農業も紹介してしまうのか!?

水戸靖宏(山形R不動産/千歳不動産・マルアール代表)
山形R不動産の代表であり、千歳不動産株式会社の代表取締役、そして株式会社マルアールの代表も務め、さらに現役の兼業農家として、ラ・フランスやさくらんぼを栽培。