第56話 Daydream Believer
2014年5月
果樹園に今年も花の季節がきました。
サクランボも

5月1日、サクランボ満開。
ラ・フランスも

5月3日、ラ・フランス満開。
リンゴも

5月5日、リンゴ(ふじ)満開。
果樹園は花盛りです。
せっかくの満開の花を、強制的に吹き飛ばし花を散らしながら、満開期にやらなければいけない大切な防除があります。

5月3日、満開の花を散らしながら、サクランボの防除。
SS(スピードスプレイヤー)の高速ファンによる強風にさらされて、強制的に花びらが舞い散り「桜吹雪」状態。SSにも、自分が着ているカッパにも花びらがくっ付いて花びら模様に。

舞い散った花びらがくっ付いて、SSも花びら模様。
ちょっと可哀想な気もしますが、花吹雪の中での防除作業は、とってもキレイで神々しくもあり、春の神聖な行事にも思えたりして自分としては結構好きです。
5月中旬、果樹園の花が終われば田植えです。
と、その前に、田植えに欠かせない「田植機」、3年前、父が亡くなった年までは自前の田植機(歩行型)があったのですが、ちょうど父が亡くなった年に故障して使えなくなり、ここ2年ほどは親戚のⅠさんから乗用田植機を借りて使っていました。
(去年までの田植えの様子はこちら→第25話、第46話参照)
親戚のⅠさんは、機械が壊れて不便だろうとの純粋な思いやりから「いつでも使え」と言ってくれるのですが、毎回Ⅰさんの田植えの日程に被らないように計画して借りてきて、借り物だから傷つけないようにと必要以上に慎重に扱い、借りる前よりキレイに洗車して返す、という、借り物なんだから当たり前の気づかいが、どうにも気が重く感じていたんです。
前の機械が壊れたとき、父とも「憧れの乗用田植機、買おうか?」という話をしていましたので、中古の安い田植機があったら、そのうち買おうと思っていたところ、中古農機具屋さんのチラシに、「クボタ乗用田植機 中古 11万円」という掘り出し物件を発見!
すぐに農機具屋さんに連絡し、見に行ってみると、なかなかいい!

クボタ乗用田植機SPK 程度もいい!
値段もかなりお手頃!
どうする?買っちゃうか?即決で!?
機械の程度も価格もバッチリ想定範囲内で、ほぼ即決で買おうかという勢いでしたが、農機具屋さんに来てからまだ5分、あまりにも順調で、あまりにも希望通りだったので、なんとなく「買います!」って返事を躊躇してしまいました。
少し冷静になるために何気なく周りを見渡してみると、なんかすぐ隣に親戚から借りて使っていた機械に酷似した見慣れた感じのヤツを発見。

クボタ乗用田植機JC4 まだ新しい!
こいつは!?・・・Ⅰさんちの田植機と同じ?・・・しかもまだ新しそうだ!
値段も予算の上限だけど頑張ればギリギリ手が届く。・・・・・どうする?
冷静になって周りを見渡したつもりが、当初の目的物件=「お手頃な価格」に対して、もう少し新しくて安心して使えそうな物件=「お手頃な価格の倍以上」につい目を奪われました。
実は中古農機具屋さんに行く前、少しネットで調べて行ったので、クボタの乗用田植機で色がオレンジのものは一世代前のタイプ(=古い)、ブルーのものは「クボタブルー」と呼ばれる現行のタイプ(=新しい)、ということぐらいは知っていて、つい比較してしまったのです。
一度戻って更に調べると、現行のタイプといっても既に10年前後経つ機種のようで、肥料撒き機能やモンロー(自動水平機能)はついてないけど、シンプルな構造で操作が簡単、我が家の田植えに必要な機能は申し分なく、大事に使えば10年以上は問題なく使えそうです。
(しかも、同等機種の新車なら70~80万円もします。ちなみに親戚のⅠさんの機種は肥料撒き用のアタッチメントが着脱可能でモンロー付でしたから、これよりグレードの高い上位機種で、同等機種の新車だと120~140万円もするものでした!)
オレンジの古いタイプは年式の詳細は不明ながらおそらく20年以上前の機種と思われ、値段は安いですがその年式なりのトラブルは覚悟が必要と思われます。
我が家は果樹農家ですから、田んぼからはそれほど売上げはありません。正直、自分ちと親戚数件が一年間食べられる量しか作っていません。10年使って元とれるぐらいの値段の機械じゃなければ、見栄はって機械買って米を作るよりも、自分で作らずに毎年米を買って食べた方がいいことになります。
そういう事情を踏まえて一晩考えた結果!
はい。買っちゃいました。クボタブルー!

新しい田植機届きました!(自分で運んできました)
古くてもお手頃な物件には最後まで迷いましたが、やはり使い安さと安心をとりました。
限界まで値切って、最後は自分で取りに来るから!と納車経費分まで引いてもらって。
(正確な値段は恥ずかしいのでナイショです)

3年ぶりの自前の田植機ゲットだぜ!
NEWマシーン(中古ですが)クボタ乗用田植機 JC4、我が家に初登場です!
どうです?カッコイイでしょ?クボタブルー!
こうなると、今年の田植えは嫌でもテンションが上がります。
代掻きの終わった田んぼは田植えを待つのみ、キラキラ輝いています。

代掻きが終わって田んぼの準備完了!
苗も順調に仕上がって、いざ田植えだぜ!

今年も苗は順調に育ちました!
NEWマシーンは絶好調!

5月19日、クボタブルーのデビューです。
ガンガン植えていきます。

でも、初乗りなので運転は慎重に。
そして今年も、無事に田植え終了。

苗が植えられ、夕映えに染まる田んぼがキレイです。
NEWマシーン(命名:トシノブ)を購入して、終始テンション上げ上げで田植えを終えましたが、我に返ってよーく考えると、一年にたった一日使用するためだけに○○万円の投資。
ホントによかったのか?
自分は、いつまで田んぼ作れるんだ?
ま、しょうがない。なんとか10年続けられればいいか。。
現代の農業は機械化され、効率化されて、後継者もなく農家の高齢化が進むなか体力的にも負担が少なくなり便利になった訳ですが、実質的な採算面を考えればかなり疑問です。
10年使えればトントン、・・・トントン?利益は?トントンじゃ商売にならないですよね。
(それをわかってても、機械買ったりしてるんですが。それが現実)
我が家に限らず、日本の農家の現状なんて多かれ少なかれ似たようなもの。(と思われる)
都市部を除いては将来開発される見込みもなく、農地は半永久に農地のまま、売っても二束三文で、買い手も借り手も簡単には見つからない。
農業を続けることだけが、自分の所有する農地を管理する唯一の方法だったりします。
TPPによる関税撤廃を見据え、農業法人の設立推進やら、農地の大規模集積やら、国が莫大な補助金をバラまいて農業を再編する政策が行われていますが、欧米型の大規模農業経営をすることが、この国の農業を守ることなのか?
じいちゃんとばあちゃんと、とうちゃんとかあちゃんと、家族みんなで力を合わせて、家業として田畑を守りそれを糧にして地味に暮らしていく。
そんな日本らしい農業なんて、もうないんですね、たぶん。
つづく

山形R不動産メンバーの水戸靖宏が、ある日突然兼業農家になり、戸惑い、苦悩し、時折愚痴を言いながらも、楽しく農地と向き合っていくストーリー。後継者不足で増え続ける空き農地。山形R不動産では物件ばかりではなく、農地や農業も紹介してしまうのか!?

水戸靖宏(山形R不動産/千歳不動産・マルアール代表)
山形R不動産の代表であり、千歳不動産株式会社の代表取締役、そして株式会社マルアールの代表も務め、さらに現役の兼業農家として、ラ・フランスやさくらんぼを栽培。