近頃の仙台ー山形間の行き来の手段といえば、高速バス。
でも、それ以前は仙山線(仙台ー山形間を結ぶ路線)が主流でした。
今となっては時間も手間もかかる仙山線での山形への旅路。
あえてそれを選ぶ事で、普段得られない発見に出会う事もあります。
山形行きの始発電車は様々な出会いに溢れているのです。
遠くの空にうっすらと朝日を臨むだけ、人影もほとんどありません。
この日の朝の気温は-2度、寒さで顔が痛いくらい。
気温は一段と寒くなり、車内の窓ガラスはうっすら白く結露し始めます。
県境に近くなるにつれて、次第に雪の量も多くなっていきます。
県境のトンネルを抜けると、すぐに「おもしろやまこうげん」駅に到着です。
そこはまるで別世界といった光景。
「ああ、山形に来たんだ」
と、実感させられる瞬間です。
日の出時間が遅い冬場は、この地点にさしかかって、ようやく辺りが明るくなってきます。
そして、人の乗り降りも次第に多くなってきます。
車内に差し込む朝日に照らされながら、部活やテストの会話に花を咲かせる高校生達を見ていると、どこか懐かしい気分になります。
終点「山形」駅に着く頃にはすっかり日も昇り、人も街も動き出しているのが、車窓からの眺めでもはっきりとわかるようになります。
風景や季節の移り変わり、人々の営みを感じ、常に新しい発見のある仙山線。
特別な観光地に行かなくても、ただ無心で乗り込むだけでも、十分山形の魅力を感じられると思います。
(文・写真=小野岳)