【第1話】60年の貸家に再び光を —再生プロジェクト、始動。—
ある日、一本の相談が届いた。
長年貸していた古い貸家の入居者が退去することになり、次の使い方を考えたい──というオーナーからの声だった。

東西に長く伸びる建屋。2階の“控えめな存在感”が愛らしい
築は60年を超える
前入居者が長く住まわれていた分、内装の傷みも大きく、原状回復にも相当な費用がかかる。
建て替えてアパートにする案も出ていたという。
けれど、現地を訪れたとき、この家が持つ“味わい”と“ポテンシャル”を感じた。
白く塗られた漆喰の壁。
年季の入った木製サッシ。
そこに嵌め込まれた型ガラスには、時間の層が静かに刻まれている。
東西に長く伸びた建物の上に、控えめに載った2階。
どこか慎ましく、でも愛らしい佇まい。

白壁と、木製サッシの柔らかなコントラスト
お世辞にも立地は良いとは言えない。
山形駅から少し離れた、路地のさらに奥。
けれど、その先に白壁の外観がふっと現れた瞬間、やっぱり心が躍った。
隠れた場所に、ちゃんと光を放つ建物がある。
この出会いこそ、再生のきっかけだった。

路地の奥にひっそりと現れる、白壁の貸家
今回、山形R不動産の新旧メンバーが再び集うことになった。
大学時代に馬場先生のもと、旧R不動産メンバーとして山形の空き家問題を学んだ小野さん。
現在はリノベーション会社で働きながら、今回のプランニングを担当してくれる。
そして私は、現R不動産メンバーとして収益性や募集面を見ながら、このプロジェクトを進めていく。
それぞれが立場を越えて協働し、一軒の古家に新しい価値を生み出す試みだ。

この家はオーナーの生家でもあり、打ち合わせの合間には幼い頃の思い出話も伺う。
ファーストプランを見たオーナーからは「ぜひこの方向で」と前向きな返事。
本日は現地にて、契約前の最終打ち合わせを行った。
この家はオーナーの生家でもあり、打ち合わせの合間には幼い頃の思い出話も伺う。
かつて家族が過ごした時間が、いま新しい暮らしの形へと繋がろうとしている。
来週、正式に契約を結び、いよいよ解体工事がスタートする予定。
まずは不要な壁を外し、この家の「素の姿」をあらわにしていく。

型ガラス越しに感じる、60年分の時間
次回は、解体で見えてくるこの家の素顔をお届けします。

ここから、再生の物語がはじまります
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